スプラトリー諸島周辺は、戦前は日本が統治していたが、1952年のサンフランシスコ講和条約により、日本は領有権請求権を放棄した。しかしこの際に、国際社会は、この地域の具体的な帰属先については明言しなかった為、これ以降の時代においては中華人民共和国やベトナムをはじめ、近隣諸国の間で領有権争いが巻き起こる事態となっている。

この地の領有を一方的に主張し、軍事基地を建設している中国に対して、米軍は偵察機を飛ばし、また自由航行作戦などを実施しているが、それに対し、中国は、「非常に無責任で危険な行為。地域の平和と安定を損ねる」と非難している。「盗人たけだけしい」とはこういうことを言うのだろう。

1988年、中国はこの地の領有をめぐって、ベトナム軍と対峙した。いわゆるスプラトリー海戦である。しかしそれは海戦と言えるものではなく、殆ど無防備のベトナム軍に対しての、一方的な「虐殺」だった。

中国海軍は、駆逐艦と海兵隊など多数をスプラトリー諸島に派遣した。ベトナム軍は、輸送艦と、海軍50人がジョンソン南礁(赤瓜礁)を守っていた。ベトナム軍の決意は固く、防御する物が何もない浅瀬に腰まで海水につかり、3旗の国旗を翻らせ、必死の抵抗を行った。結局中国軍は、35ミリ対空機関砲で、浅瀬に身をさらしているベトナム海軍と工兵を掃射し、100ミリ砲で輸送艦を撃沈した。ベトナム軍の64名が犠牲になり、遺体は3体だけが見つかっただけだった。これは「海戦」などではない。まさに「虐殺」だった。

その後、ジョンソン南礁には中国軍が軍事基地を建設、現在は飛行場も建設されている。

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かつては、中国の与太話と思われていた第一列島線内の領有化、アメリカと太平洋を分割しようという第二列島線は、中国は本気で考えているということが次第に明らかになっている。そしてそれは、戦後秩序を武力で破壊しようとするものだ。もちろんサンゴ礁への悪影響など全く考えているはずもない。

日本は、尖閣諸島にも沖縄にも、このような悪辣な勢力が身近に迫ってきているのだ。