③、朝鮮戦争は内乱、日米中ロ、争乱の封じ込め

アメリカはこれらの動きに対して、直ちに東シナ海と日本海に空母部隊を派遣し、中国もまた中朝国境の鴨緑江一帯に、人民解放軍の大部隊を配置した。日本も海上自衛隊と航空自衛隊が、宮古島から日本海にかけて展開し、万一に備えた。

中国は、台湾を巡っての緊張の中にあり、南北朝鮮の争いに深入りするつもりはなかった。また、アメリカも、かつての朝鮮戦争のように、地上部隊を派遣するような深入りをするつもりはなく、ロシアもまた、自国内のウクライナ問題などで手いっぱいであり、アメリカや中国の頭越しに朝鮮半島に手出しするつもりなどさらさらなかった。

日本はもちろん、もともと反日色の強い韓国や北朝鮮に対し、犠牲を払うつもりはなく、在韓邦人の救出と、北朝鮮の拉致被害者救出の可能性を探ることにしか興味はなかった。

アメリカと中国、ロシア、日本は、朝鮮半島の争乱に対して密かに会談を行った。これらの国々の共通認識としては、武器供与をしなければ、韓国、北朝鮮ともに戦争を継続する能力はないということだった。アメリカも中国も、かつての第一次朝鮮戦争では多大な犠牲を出しており、その轍を踏むつもりはなく、またロシアも含め、国内情勢がそれを許さなかった。

アメリカ、中国、ロシア、日本の4ヶ国は、韓国、北朝鮮に、一切の武器供与は行わないこと、戦火が北朝鮮、韓国の領土内にとどまっている限り手出しはしないこと、戦火が拡大し他国を脅かすような場合は、自衛的先制攻撃を行うことを互いに認めた。また共通の関心事である北朝鮮の核兵器に関しては、北朝鮮が核ミサイルを発射するような場合は、共同で対処することを申し合わせた。日本はもちろんこれらを承諾したが、状況次第で、北朝鮮拉致被害者救出のために、少数の特殊部隊を出すことを認めさせた。

韓国はアメリカに対して、米韓同盟をもとに、前線への派兵を要請してきた。しかしアメリカはこれに対して、「韓国が南北統一を志向してきた上での騒乱であり、韓国の内戦であり、同盟の範囲外と考える」旨を通告した。また北朝鮮は、北京に特使を送り、武器の供与を要請してきた。中国はこれに対しては、「外国勢力が侵攻した場合は別として、現状は内戦であり、協力できるものはない」と通告し、さらに、「北朝鮮軍が鴨緑江を超える場合は、直ちにこれを撃退する」と通知した。そして、アメリカ、ロシア、中国は前後して、朝鮮半島の動乱は内戦であり、民族自決のもとでこれを解決すべきであるとの声明を出した。

とはいえ、第一次朝鮮戦争のときのように、すでに同民族での虐殺は始まっているようで、また、いつ北朝鮮が暴発し、核攻撃を行うか、厳重な監視が必要だった。


④、補給路確保の海州上陸作戦、南北海軍壊滅

10月、北朝鮮軍は、韓国内陸のチュンチョンに進出し、3万人ほどの非武装住民を虐殺した。韓国軍は、北朝鮮の平壌を伺える位置の工業都市のサリウォンに進出した。しかし両軍ともに補給線がぜい弱で、武器弾薬の補充もままならず、食料は現地調達で、その地域は無法地帯となっていた。両軍による消耗戦は続いており、北朝鮮軍は、先の朝鮮戦争と同様に、消耗した兵力もまた現地住民を強制徴募し、抵抗する者は容赦なく殺害した。

11月となり、韓国は平壌攻略のための補給路の確保と、北朝鮮の海軍力を壊滅させるため、艦艇が集結している北朝鮮の港湾都市、ヘジュ攻略の作戦を発動した。韓国の海軍艦艇は、最新の装備がされているはずだったが、その多くは、国内の技術力が伴っていないため、その能力には多くの問題があり、韓国自慢の強襲揚陸艦のドクト艦などは、エンジンを修理することが出来ずに、作戦には参加できない状態だった。

これに対して、北朝鮮海軍は、最大のフリゲート艦でも1200トンほどの、旧ソ連製の艦艇をもとにした旧型のもので、近代戦を戦えるものではなかった。しかし、小型のミサイル艦や魚雷艇、潜水艦など、艦艇の数は多かった。韓国海軍は近代装備は施しているものの、軍内部の不正により、ソナーの代わりに魚群探知機が搭載されているなど、装備も十分な状態とは言えなかった。

韓国海軍のイージス艦など多数の艦艇が、ヘジュ沖に進出し、北朝鮮海軍のフリゲート艦や小型ミサイル艦、潜水艦群と激烈な海戦が行われた。両海軍ともに、最初こそ、遠距離から対艦ミサイルなどの最新装備での攻撃を行ったが、さほどの戦果は挙げられず、結局、旧式装備の北朝鮮海軍と近接戦となった。その戦闘は、互いに砲弾と魚雷を打ち合う、前近代的な消耗戦となった。

韓国軍はその殆どの艦艇を失ったが、それは北朝鮮軍も同じで、それでも最後は航空戦力の差で、辛うじて上陸に成功し、ヘジュを抑えた。